ヨモギゼミナール

音無響子さんに憧れて、「経理のお姉さん」を横浜でやってます。クラウド会計、Fintech、星野源について日々考えています。

経理未経験の28歳女子が、半年でNPOの会計をまるっとクラウドにしちゃった話 その2:使うてみまひょか、会計ソフト。

だんだんどうも、鮫肌です。

勉強や執筆といった、没入する系仕事の時は、

BGMにある1曲をひたすらリピートする癖があります。

 

前回の記事書いているときのキラーチューンがこちらでして。

www.youtube.com

書き終わった後に、「カニ食べたい!」と近くにいた友人に叫んだところ、

プロテイン飲みたい』って歌聞いたら、健康になれるんじゃないですか」

と言われました。

 

作詞作曲家、急募。

歓迎条件、かに道楽連れて行ってくれる優しさをお持ちの方。

 

今回から実際の、「ひとり経理」の実務を紹介していきます。

 

日々の取引を記録してみよう

まず、前回の記事で説明した、経理の4つの「はかる」の中で

「①量る」、と「②測る」部分をやってみましょう。

 

この作業は、企業や団体が日々行う活動で行われた取引を

記録していく作業です。

これを経理の世界では、「仕訳(しわけ)」と呼びます。

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 たぶん、簿記やったことがない、もしくは簿記にアレルギー持っている

人は、貸方と借方、左右に分けて記入することに抵抗があるんじゃないかな

と思ってます。

 

複式簿記と呼ばれるこの書き方は、

「何かを得る(左側=借方)ためのお金を、どこから持ってくるのか(右側=貸方)」

を一気に記録する方法です。

資産を取得するためには、その対価に相当する金額をどこからか調達する

必要があるため、貸借対照表の上では、左と右は常に合計の数字が一緒になります。

 

資本金が企業活動の源になることは、何となく分かるけど、

右側に書かれた負債が活動するためのお金を調達する元になる、

という点にピンとこない人も多い気がします。

 

負債は、別名「他人資本」と呼ばれます。

自社ビルを建てるために、銀行からお金を借りることもありますよね。

その時の借入金が、負債となります。

あとあと借りたところに返す必要がある資本(売上を生み出す元)を

負債というわけです。

自分たちのお財布が足りなくなったから、負債として借りるというよりは、

売上を出して儲けるための源泉として他の人から借りてくる資本

負債と呼ぶというイメージですね。 

 

仕訳をするときは、

まず「何が『もともとの位置』に来るのか」を判断して、

その反対側に対応する内容を書いていくという感じです。

 

ここからは、実際に会計ソフトを使いながらやってみましょう。

当団体で使っているfreeeの使い方に合わせてお話しするので、

他のもの使っている人は、サクサク読んでおいてください。

 

ソフトでお金の流れを記録してみよう。

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これが、仕訳(freeeでは、「取引登録」と呼びます)の画面です。

 

入出金日・金額・相手先が書かれた各取引の情報が口座から引っ張り出されるので、

その取引に対して、「何に使った/何で稼いだ」お金なのか(いわゆる勘定科目)

登録していきます。

 

貸方/借方に分けて、どっちが左でどっちが右で、と考える作業をしていないように

見えますが、実は、上で説明した仕訳の作業はソフトの中でやっています。

 

仕訳の基本的な考え方に戻ると、

口座の残高が増える(入金があった)場合は、資産が増加しているので、

借方の元々の位置(=左側)の項目に口座と書きます。

 

銀行口座 〇〇円 / (稼いだ理由 例:売上) 〇〇円

という感じですね。

 

一方で口座から支払いがあった場合は、資産が減っているので、

逆の位置(=右側)の科目欄(取引内容について書くところ)に

口座と記入します。

 

(支払いの理由 例:消耗品) ●●円/ 銀行口座 ●●円

と記入します。

 

 人間が通帳を見ながら、会計ソフトに記録する場合、

先に貸方/借方に入る項目と金額を考えて、その内容に合わせて

記録を行います。

 

一方でクラウド会計ソフトの場合、

口座から金額と取引相手、取引日を最初に引用します。

 

上で説明したように、口座取引の多くが

入金であれば借方、出金であれば貸方の勘定科目が

「口座」にすればオッケー(ちょっと乱暴な判断なのですが)なので、

ソフトで自動で片方の勘定科目を記入しておきます。

 

そして、もう片方の勘定科目、

すなわち入出金の理由・目的を、人間側で入力します。

 

「測る」から「計る」へ 。〜NPO会計の仕訳ポイント〜

いわゆる、損益計算書や貸借対照表といった決算書類は、

先ほどの各仕訳を作成する書類に見合うように分類分けして、

足し引きした数字をまとめていきます。

 

毎日食べたものが、今日のあなたの体重を決めるように、

日々の仕訳が繋がって、年間の決算書類が作成されていきます。

 

だから、会計ソフトを使う時は、最後に作成する決算書類の形式に

合わせた勘定科目を設定しておくことが大事です。

  

特にNPOの場合、事業を継続するために、

ちょっと独特な活動計算書を作る必要があります。

 

NPO会計基準にあった仕事をしていくために、

まずは活動計算書の仕訳ポイントをちょっと見てみましょう。

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ざくっというと2つがポイントです。 

費用を「事業費」と「管理費」に区分する。

②いわゆる「利益=収益(稼いだお金)-費用(稼ぐために必要なお金)」を

計算するために最初に計算する「売上」にあたる部分に、

受け取った寄附金・会費・助成金を加える

 

 

会計ソフトが勘定科目を設定する上での基本にしている

損益計算書を作るための企業向け会計(管理会計)では、

1年間活動してきたら、「ふつー」に発生した収益、

すなわち経常利益をこうやって計算します。

 

ちょーっと長いので、あささささぁな感じで流してください。

 

   売上高

-) 売上原価(商品の仕入れや、商品の生産に必要なお金)

   ex)ケーキ屋さんで販売するシュークリームの材料となる卵 

-) 販売費&管理費(商品を売るため・会社を維持するために必要なお金)

   ex)ケーキ屋さんの店舗の家賃

--------------------------------------------------------------------------------

 営業利益(モノを仕入れて売る、という会社の根幹の活動による収益)

+)営業外収益営業活動によるものではないけど、毎年発生する利益)

    ex)銀行口座に入る利息

- ) 営業外費用(営業活動によるものではないけど、毎年発生する費用)

 ex)建物を新築するために、借りたお金のために支払った利息

--------------------------------------------------------------------------------

経常利益

 

これに対して、非営利法人が提出する活動計算書では

経常利益をこうして計算します。

 

 経常収益(1年間の活動全体によって得た収益)

 ex)受け取った年会費、もらった寄付金・助成金、主催イベントで集めた参加費

-)事業費定款で定めた、プロジェクトを行うために必要なお金)

   ex)イベント会場の場所代、講師に支払った謝金

-)管理費(一つ一つのプロジェクトには直接紐づかないけれど、団体運営要るお金

 ex)小生の給料、事務所の電気代

--------------------------------------------------------------------------------

経常利益

 

企業であれば、商品を仕入れることも、人を雇うことも、

基本的に全ての活動は、「商品・サービスを販売して、利益を得ること」

を目的に行われます。

だから、「営業活動によって、どれだけ儲けた・損したか」を、

損益計算書の最初に出して、そこから営業活動以外での収益・費用を

足し引きしていきます。

 

一方で、主として実施している活動から「利益(稼いだお金ーかかったお金)」

(ちょっとこの言い方乱暴なのですが、管理会計と比較するために使わせてください)

を計上しづらい非営利団体では、

いただいたお金を事業によって直接発生したものに加えて、

寄付や助成金など「団体の存続を支える部分」を最初に足し上げた上で、

費用を事業に直接必要だった部分と、団体そのものの維持に必要な部分に分けて、

運用状況を報告している、というわけです。

 

ただ、NPO会計は管理会計を全く違うではなく、

勘定科目(収益・費用が何によって発生したものかを表す項目)は

基本的に同じものを使います。

 

その上で、先ほど説明したような、

「計る」=書類を作るために各仕訳をグループ化する作業が

ちょっと違うよ、ということです。

 

さて、一般的な会計ソフトは企業会計を主軸において作られています。

簡単にいうと、それぞれの勘定科目に対して

売上/仕入/販売・管理費といったグループを紐づけておいて、

損益計算書や貸借対照表を作る時にこのグループわけを元に、

足し算と引き算をしています。

 

でも、活動計算書を作るために必要な事業費/管理費のグループ分けには

基本的には対応していませんでした。

 

んで、そこを対応したキットを配布しているのが、会計freeeですね。

keiei.freee.co.jp

導入方法は、↑のページからキット請求すると、

イケメン(声のみ)のお兄さんから「導入をサポートします」

とめっちゃええ声で電話してきてくれるので、

それに甘えちゃうのが一番早いです。

 

ただ、ちょーっと作りが荒いところと税法に合わせて考えた方が

いいところがあるので、伝えておきますね。

 

ここだけ注意、NPOキット。

NPOキットは、勘定科目と部門セットの2つからできています。

特に大切なのが、勘定科目セットです。

 

ここでは、事業費用と管理費用を、

勘定科目の頭に【事】/【管】とつけて区別しています。

 

例1:イベントでセミナーしてくれた先生に講師料払った時の勘定科目

→【事】業務委託費

例2:毎月発行する事務局だよりをコピーした代金の勘定科目

→【管】印刷製本費

 

 そして、【事】であれば仕入、【管】であれば販売管理費として

貸借対照表などを作る時に分類されるように設定されています。

 

ちょっと厄介なのが、この【○】がつかないけれど、それ以外は中身一緒の

勘定科目が初期設定で入っている点です。

仕訳を行う時に謝って、カッコなしの科目を選んでしまうと、

活動計算書を作る時に、その科目は計算の対象外になってしまうわけです。

ひゃあ。

 

さらにいうと、freeeでは勘定科目は初期設定のままであれば 下の図にある赤枠の科目から、「んー。これかなぁ」と 選ぶことができるのですが、NPOキットから取り込んだ科目については、こうして選ぶことができない仕様になっています。

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そんなこんなでこの2点をまずは気をつけましょう。

 

その1:初期設定の勘定科目を選択できないようにしておきましょう。

その2:ショートカットの設定に修正が必要。

 

NPO法人科目セットから取り込んだ勘定科目を入力するためには、

ショートカットを欄に入力する必要があります。

ここで入力した時に、初期設定のままだと、

カッコなし科目が一緒に検索されてしまいます。

 

なので、まずは【事】と【管】のついている費用のカッコなし科目を

検索結果に出てこないように設定します。

方法はこちらを参照してくださいませ。

support.freee.co.jp

 

で、「検索での表示」を消す勘定科目を下に並べておきます。

かなーり多くて大変なのですが、大事なので気合いとおやつと

お〜いお茶で乗りきりましょう。

 

役員報酬・給料手当・雑給・福利厚生費・法定福利費会議費・交際費

旅費交通費・水道光熱費・通信運搬費・消耗品費・修繕費・賃借料

業務委託費・謝金・支払手数料・支払寄付金・新聞図書費・地代家賃

印刷製本費・租税公課・研修費・保険料・諸会費・減価償却費・雑費

 

あと、これは個人的な好みもあるのですが、NPO勘定科目セットの

ショートカットキーの表記が初期設定と異なるため、ちょっと迷います。

 

例えば、「消耗品」科目は、初期設定では「shomou」ですが、

NPO勘定科目セットでは「s『y』omou」で設定されています。

 

「しゃ・しゅ・しょ」を、「sha・shu・sho」で普段打つ人は、

セットをソフトに入れる前に、エクセル上でショートカットキーを

置換しておきましょう。

 

ご参考までにやり方置いておきます。

www.sony.jp

 

勘定科目セット見回して、気になるショートカットキー探しといたので、

↓見て、当てはまる人は直しておくと楽です。

 

・「しゃ・しゅ・しょ」→「sy a/u/o」で設定されている。

「sh a/u/o」派は修正必要。

対象科目:

事業収益・【事】【管】消耗品・【事】【管】謝金・【事】【管】諸会費・【事】【管】修繕費 【事】【管】減価償却費・【事】【管】役員報酬

 

・「つ」→「 tsu」で設定されている。 「tu」派は修正必要。 対象科目:【事】【管】通信費 ・「ふ」→「 hu」で設定されている。 「fu」派は修正必要。 対象科目:【事】【管】福利厚生費

(余談ですが、名前が近い科目に「法定福利費」というものが

ありますので、ここも注意してくださいませ)

 

ちなみに、勘定科目セット入れてからも、

科目の設定変更からショートカットキーの変更は可能です。

設定変更の方法はこちら。

support.freee.co.jp

 

なかなか骨がばっきんばっきんがむ宮殿に折れてしまいそうですが、

ティータイム入れつつ、じんわりいきましょう。

 

ここまでくれば、あとは最後の注意ポイントです。

 

その3:初期設定では、受け取る会費が消費税非課税科目になっている。

これは、NPO会計キットの問題というよりは税法上のポイントです。

 

勘定科目セットは、

科目・決算書表示名・分類(資産なのか、負債なのかなど)・ショートカット

に追加して、「消費税課税対象か」という項目が入っています。

 

その中で、受取会費科目はセットの初期状態だと、

消費税非課税に設定されています。

 

消費税が課税されるかどうかの分かれ目は、

専門用語でごめんちゃいなのですが、

「対価性のある取引かどうか」です。

 

例えば、会員さん限定でイベント入場料を割引にするなど、

「会員になることで、会員でない人が受けられない特典がある」

とみなされる場合は、NPOであっても会費は消費税の課税対象となります。

 

この点、ちょうど当団体も先月の税理士先生訪問で指摘してもらったところです。

解説含めて、その時の会話を書いておくので、

長いんですが、気になる方は読んでみてください。

 

【先生】

笹川さぁん(小生の世を忍ぶ仮の名)、会費非課税で入ってますけど、

去年まで私、消費税課税対象にしてたんですよー。

御社(先生ウチの団体をこう呼んでくれます)、会員特典ありましたっけ。

 

【鮫】

あ。ホントですねぇ。会員さん向けに、メルマガは発行してますけど、

イベント自体は誰でも参加できるんですよねぇ。

WEBでの告知も全公開ですし。

特典というと微妙なところですよねぇ。

 

【先生】

まあ、メルマガ自体が会員だけに送られているのであれば、

イベントは公開であっても特典とみなされる可能性は高めですね。

 

【隣にいた職員さん】

あと、会員になるとウチの団体が所有している会議室が割引で借りられますね。

でもそれは、会員さんもウチにお金払ってもらってるから、

会員さんは得をしてるっていえるんですか?

 

【鮫】

そこは、『会員さんが団体に費用を負担したか』ではなくて、

『非会員と比較して会員が得をしたか』が論点になるんですねぇ。

だから、一般の人よりスペースを安く借りられるという点は、

特典として考えるのが妥当であり、ウチの会費は「対価性のある取引」

と見なして、消費税課税対象になりますというわけですねぇ。

 

【隣にいた職員さん】

へー。そうなのかぁ。じゃあもっと会員さんに得になるというか

団体に関わってもらえるように何ができるか考えたいね。

 

【先生】

こういう話、したかったんですよね。

 

【鮫】

ねー。

 

詳しくはこちらもどうぞ。

blog.canpan.info

 

そんなこんなで、かなりボリュームモリモリでお送りした

会計ソフト事始め。

ちょーっとずつでいいので、諦めずにやっていきましょー。

 

次回は、実際の仕訳を楽できる設定と仕訳のお悩み相談室をお送りする予定です

…がしかし。お腹すきましたねぇ。

と途方に暮れていたら、常連さんが焼きそばと唐揚げくれました。

ありがとうございます!!と五体投地しちゃいますね。

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ビールほしいところですが、仕事中なので

休日出勤の悲しさを紛らわすために、事務所に持ち込んだ

炊飯器で錬成したカボチャスープと一緒にお昼にします。

わーいわーい。

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ビジュアルが魔界。

そしてハイカロリーの恐怖。

でも幸せだからいいんですよ。

帰りに腕振って歩けばいいんですよ。

 

Don't worry,be happy.なんていいますけど、

worryしたっていいじゃないですか。

不安の後に見つけた幸せは、

向こう見ずな楽観ではなく、

ちゃんと足のついたものですからねぇ。

 

小生は、裏方で日々頑張る事務のみなさまを

応援しております。

 

といいこといった感出して、お昼ご飯食べます。

いただきます!